変異株の拡大、製造業への打撃を防げ

2021年8月23日

 五輪が終わり、後にはコロナが残った。現状では東京都の感染状況が突出して悪化しており、全国でも1日の感染者数は連日2万人に迫るなど過去最悪の規模となっている。主要交通機関について盆休み中各地での混雑は見られなかったとのことだが、本号が出る頃にはその影響も出始めている頃だろう。2回の接種を終えていない人が大半だという現状で「ワクチン3回接種(ブースター接種)」が議論されていることからも今年中の終息が望めないのは明らかで、終息どころか医療崩壊が目前に迫っている状況だ。
 コロナ禍によるリスクが高まっている中、鋲螺業界の経営環境は良好とは言い難い状況が続いている。かねてから報じられている通り鋼材価格の高騰が製品価格に影響を与えており、製品によっては輸入品から国産品への切り替えを試みる動きもあるという。財務省が公表している貿易統計を見ると鋲螺類の輸出は昨年秋頃よりコロナ禍からの回復が進み、特に今年2月以降はコロナ禍前の2019年を上回るペースが続いているのに対し、鋲螺類の輸入は製造業の回復傾向が鮮明になってからも19年を下回る低調なペースが続いている。これには材料価格だけでなく輸送コストの上昇も背景にあるものと思われる。
 鋼材価格の上昇はもちろん国内メーカーにも影響している話であり春先から六角ボルトを筆頭に価格改定の動きがあったとのことだが、日本銀行が公表している国内企業物価指数を見ると特に今年3月を境目に鉄鉱石、ニッケル、銅といった各種鉄鋼材料が前年比で5割以上、中でも鉄鉱石と銅はその後6月時点で倍近くまで上昇するという極めて大幅な上昇傾向を見せているのに対し同統計によればボルト・ナット、ねじ類は1~2%程度の上昇に留まっている。鉄鋼市況については特に中国の粗鋼減産政策の影響から秋以降も強含みで推移するという見方があり、これによる鋲螺製品への影響は避けられないだろう。
 コロナ禍が悪化する一方、広く報じられているように自動車や半導体、鉄鋼等の分野を筆頭に製造業の回復が顕著となっている。上場企業のうち1割強が業績を上方修正したとされているが、極めて感染力が高いとされるデルタ株や、更に国内での感染が確認されているラムダ株が感染拡大することで昨年同様工場が稼働停止するようなことになれば製造業も再び厳しい局面を迎えてしまうだろう。政府は8月末までとされていた緊急事態宣言の延長を既に決めているが、より感染力が強いとされる変異株にこれまで同様の措置で対応できるのだろうか。現状製造業の回復があって持ちこたえている国内経済はコロナ禍が悪化したならば昨年を超える厳しい冷え込みに見舞われかねない。日本のモノづくりを守るためにも政府は自粛要請を超えた感染防止策を実行すべきだ。

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