変化する経済環境と不変のニーズ

2021年8月9日

 本紙も前号で第4000号を迎える事が出来た。まずは本紙を支えてくださっている皆様に感謝したい。時評子は今回特集として「第4000号を迎え 記念号を振り返る」を担当し、昭和41(1966)年の第1000号、昭和57(1982)年の第2000号、平成13(2001)年の第3000号を見返してみたが、時代背景で現在と隔世の感がある経済環境、そして変わらない点を感じさせられた。
 数年前、組合の会合で現在経営陣トップ(社長)や後見役(会長・相談役)に就いているおよそ60代以上の世代から「ねじ業界で最も勢いのあった時代は?」と質問したところ「昭和40年代」との回答が多かったが、その時代となる本紙第1000号を調べると、冷間ボルト・丸製ナット・ねじ用機械工具(原料のタングステン)が10~15%値上げ―、とあるだけでなく労働力不足問題に対して「賃上げだけではダメ」…つまり賃上げは大前提という記事まであったのでかなりのインフレーションと推測され、当時の時代背景も調べたところ高度経済成長期の真っただ中であらゆる物価が同等に上昇傾向のインフレだった事が分かり、現代のスタグフレーションとも云われる不景気における値上げとは意味合いが違うのが感じられた。
 第2000号では第二次石油ショックの影響もあり一時的な不況で関東・関西とも需要低迷に悩んでおり、分かりやすい事例としてトラックによる輸送運賃が15%アップ。また都内ねじ企業が「アセンブリを本格化」とあり、この頃からねじ単体でなくねじを含む部品や広い意味で金属加工品として製造・販売を進めていった様子も考えられる。
 第3000号は1990年代のバブル崩壊に端を発して現在も続く「失われた20年、もしくは30年」とも呼ばれる慢性的な不況。その中でも通称「IT革命」が起こりこの関連は勢いがあった事もあり、製造業における軽薄短小化・電子化が進み現在も定着している。
 およそ半世紀―。ねじの原理・規格・用途は変化が乏しくとも、ユーザーとなる製造業では経済環境の変化は激しく、ねじメーカー・商社とも時代に取り残されないよう新製品・技術、新たな販路や営業方針を追い求め続けてきた事が分かる。
 その一方で生産性の向上、不良品発生の防止=品質管理、生産・販売における単一品目の大量ロットと少ロット多品種の両極化、短納期化―、と市場から求められ続ける不変のニーズも伺える。
 時代の変化は加速度的―といわれるが、業界における半世紀以上の歴史を振り返り現代と比べてみれば、変化し易いもの、変化せずにいるものが自ずと見えて、これからの経営の指針が見つかるかもしれない。

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