選挙・投票という意思表示の難しさ

2021年7月19日

 〝国政選挙の前哨戦〟の意味合いが強いとされる東京都議会議員選挙(7月4日投開票)の結果は、最大派閥だった都民ファーストの会が議席減、続いて議席が多かった順に自民党が増、公明党が増減なし、共産党が増、立憲民主党が増、日本維新の会が増減なし―となったが、国政における与党の自民党・公明党合わせて過半数とならず「勝者なき都議選」とも評された。
 選挙結果による民意の解釈は様々だが、そもそも選挙という行為・制度。告示から投開票までの期間で検討して任期を任せるというのは意外と難しく民意と乖離する事が多々ある。
 今回の選挙の場合、当選した候補が選挙期間中に起こした不祥事が発覚したが、それを知っていたらその候補は当選しただろうか?また政党及び党員が国政や他の自治体で何らかの不祥事が発覚していたら、その政党に属していた候補は当選しただろうか?それこそ会社ならば経営陣の是非を問う総会前に粉飾決算等の情報改竄や隠蔽が行われるような状態であり、有権者は情報が無いと、正確もしくは納得できる判断が下せないのが難しい。
 また選挙ではないが署名という行為も意思表示にも通じる。時評子が2013年にねじ業界団体の会合を取材した際、2020年のオリンピック・パラリンピックで東京・イスタンブール・マドリードの候補地選定に対して「東京開催を支持する」旨の署名運動が会場内で行われていた。しかしその時署名した方々は新型コロナウイルス感染症が拡大した現在で改めて問われたら「東京開催を支持する」のままだろうか?
 候補者が当選した後に公約を破る事もあるが、有権者にとってその時点の投票=意思表示=民意も大規模災害等の状況次第では変わってしまう事もある。そんな中で当選した議員や首長(知事・市区町村長)、そして政党が機転を利かせて方針転換してくれるだろうか?
 ねじ・ばね、そして素材となる線材や製造に必要な設備に携わる工業(製造業)及び流通させる商業の業界関係者にとって、そして一国民として、現時点で課題となっている新型コロナウイルス感染症とオリンピック・パラリンピック開催の問題だけでなく、経済、外交、安全保障、防災、社会保障、社会基盤(インフラ)整備、社会制度―等様々な問題に対してどこに任せるべきか?俗に言う「ワンイシュー」選挙は後々問題になりやすいだろう。
 遅くとも今年10月までには衆議院議員選挙及び最高裁判所裁判官国民審査、そして来年7月には参議院議員選挙が行われる。投票はその時その場限りかもしれないが、有権者は投票する前に政党・候補者の主張や今までの活動を確認し、投票した後も見届けないとならないはずだ。

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