値上げに揺れる業界、厳しい時期続くか

2021年4月26日

 依然としてコロナ禍の収束が見えず先行き不透明な情勢が続く中、鋼材価格の上昇が鋲螺業界にも大きな影響を及ぼしている。3月中旬頃より六角ボルトをはじめとして幅広い種類の鋲螺類で値上げの動きが出始めており各社では価格改定に関する説明や関連資料の作成など対応に追われている模様だ。鋼材の供給ルートはメーカーによって様々であり製造品目によって影響の度合いも異なってくるだろうが、ある程度の製品単重がありかつ㌧単位で生産を行う量産品、すなわち鋲螺で言えばスタンダードサイズの標準六角ボルトあるいはホーマーナットといった製品は値上げを実施しないことには企業努力だけでは限界があるだろう。
 材料に加えて昨今ではめっき・熱処理といった工程についてもコストが上がっているのに加え、品質に関する要求もますます高まっている。運ばれてきた材料が製品となって出ていくまでの全ての工程で負担が増加していると言っても過言ではないだろう。更には「働き方改革」の流れもあり、昨年4月からは大企業に適用されていた残業時間の制限が中小企業へも適用されるなど時代の目も厳しくなっている。業務を効率化するにはこれまた知恵と工夫だけでは限界があり、省人化・効率化のためにも投資は必要だ。繰り返しになるが各社によって事情は各々あるだろう。しかしメーカーにとっては鋼材価格に留まる問題ではなく、人・モノの両面にわたって経営コストが確実に上がっているなか今後も安定した品質の製品を供給していくためにも協力をお願いしたいというのが実際のところではなかろうか。
 一方で今回の動きは原料価格の高騰や中国における鉄鋼需要の増加など複数の要因が指摘されているが、少なくとも実体経済を十分に反映した動きとは言い難いのは確かだ。在阪ねじ商社を見ていると値上げ路線が確実となってからは製品が活発に動き、聞くところによればキャップスクリューに関しては(おそらくは中国向け需要の回復と重なってしまったこともあり)品薄の状態が続いているとのことだった。コロナ禍で生産調整を行っていた最中需要が急回復したこともあるのだろう。
 中国向けに関しては年明け以降分野を問わず好調が続いているが、他方回復が期待されていた国内の自動車産業については大手半導体メーカーの工場で火災が発生したことにより思わぬマイナス材料が加わってしまった。ゲーム機や医療機器などコロナ特需により一部好調な分野もあることにはあるが鋲螺業界全体に波及する材料とは言えず一服した後には厳しい経営環境が続くものと思われる。今年はコロナ禍からの回復を期待されていたが、昨年ほどではないにせよ当面の間はもどかしい時間が続きそうだ。

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