EV大競争時代の予感 どう立ち回る?

2021年1月25日

 米・アップルがEVに参入するという。現時点では確度の高い情報とは言い切れないが、実現となれば山が動く可能性がある。さらに、中国検索エンジン大手の百度(バイドゥ)の参入も報じられている。これまでエンジンやパワートレインの生産はノウハウの塊で参入障壁は高かったが、EVでは新規参入が増加すると見られてきた。いずれも大競争時代への突入を予感させるニュースだ。
 アップルは韓・現代自動車(ヒュンダイ)と組むと噂で、一方バイドゥは中国の自動車メーカー・吉利汽車(ジーリー)と戦略提携を結び、子会社設立へ動くという。ようやく量産体制を整えつつあるテスラでも工場を持っているが、これらのテック企業に関しては自動車メーカーに生産委託するのが前提なのだろう。アップルは元来ファブレス企業であり、デザイン性(意匠のみならず設計全般の意)に秀でてきた。資金力とブランド力を元手に魅力あるEVがリリースされるとなれば、大方の予想にあった通り自動車産業がテック企業の下請けになる日の到来が現実味を帯び始める。
 純粋なEVはほとんど「家電」と言えることから、日本の電機メーカーではソニーが「VISION―S」を開発し、テストを行っている。また、日本のカーメーカーにおいてもEVが発売されているが、例えばトヨタではどちらかと言えばHVや水素に注力している。水素燃料の新型車「MIRAI」は、航続距離850キロを実現した。
 足元では半導体不足による減産の動きが出ている自動車業界。今やガソリン車と言えど、中身は電子制御されていることがほとんどだ。さらにEVはガソリン車に比べ半導体や制御基板など電子部品の搭載点数が増加する。自動運転やコネクテッドカー(つながる車)では、車を電気的に制御する機能が中核をなす。
 時代が進むことはあれど、戻ることは考えにくい。着実にシフトが進んでいる現実を認識したスピード感ある対応がより一層求められる。大手ファスナーメーカーでは「CASE」時代の到来に向けた設備投資、研究開発が加速している。電池やモーターに使いやすいねじの生産に向けて、工場内の気圧を調整することで不純物が入りにくいクリーンな工場を開設した例がある。
 傾向としては薄い、軽い、短い、小さい部品のニーズが増えていくとされる。さらに樹脂部品や、アルミよりさらに軽いマグネシウムの採用も視野に入ってくる。また電子部品には通電性の良い銅の需要も増える。当業界としても受け身にならず、活路を見いだしアグレッシブに打って出たい。

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