あふれる財はどこへ向かう?

2021年1月18日

 本紙アンケート調査では、昨年下半期(7月~12月期)の売上が前期から減少したと回答した企業が6割以上にのぼったが、夏の調査に比べて減少の回答は縮小した。経済産業省が発表した海外現地法人四半期調査(7月―9月期)では全地域全業種の売上高は前年同期比で6・7%減と7期連続のマイナスとなったが、前期からはマイナス幅が縮小している。
 調査の対象企業は前者が本紙関連の業界企業で、後者が海外現地法人を持つ国内企業と違いこそあるが、いずれの調査も前期データと比較すると僅かながら改善してきている事実がある。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった期間と重なる昨年前半に比べて後半はマイナス要素が和らいでいることは間違いない。一方で足元は1都3県に始まる緊急事態宣言により再び日本経済が停滞する懸念もあり、今後こうした指標がどのように動くか注視したい。
 指標と言えば日経平均株価が8日に30年ぶりに2万8000円台に回復して株式市場はむしろ好調となっている。
 株式市場と実体経済の乖離が指摘されて久しいが、財を株式市場に投資する、または労働者に配分するバランスが崩れていることが理由のひとつであろう。資本家の利益を労働者へ配分することを怠ると消費低迷につながり、それは資本家の首を絞めるため富を配分するバランスが必要とされてきた。しかし昨今はGAFAなどに例えられる通り、労働者ではなくソフトウェア、AI、ロボットといった投資により莫大な利益を得る企業が登場し始めた。技術の進化にともなう非人的投資による、とてつもなく大きなリターンが、これまでの富を配分するバランスを崩し、株式市場と実体経済の乖離をますます助長させているのではないか。
 こうした見方がある一方で今、膨れ上がる財はコロナ禍の株式市場でどこに投入されているのだろうか。日本経済新聞が1日に発表した「経営者が選ぶ有望銘柄」の中に、ソニー(1位)やトヨタ自動車(2位)などと並び、昨年10位圏外の企業がランクインしてきた。これら企業を分野で見ると、医療機器、空調、EV部品、物流機器、ロボット、5G、DX関連がキーワードといえるだろう。ここに並ぶ企業はコロナ禍でも動じない堅調な分野と言うよりは、むしろコロナ禍を追い風にしようとしている動きが見られる。
 ねじ・ばね業界でも関係性の深い分野でもあり、今年の営業や製品開発を進める上でもターゲットとして重要な市場と捉える企業も多いのではないか。

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