前期比と前年同期比

2020年12月14日

 11月中旬にテレビで「7―9月期実質GDP成長率、前期比年率プラス21・4%、4―6月期の戦後最悪落ち込みから回復」と速報が流れた。統計に触れる機会の多い職業柄、1月の年明け・3月の年度末・4月の年度明け・8月のお盆休み・12月の年末―等、毎月、さらには毎期(3カ月)で企業の営業日数や季節による需給変化等で変動する要素があり、前期比(前月比)よりも前年同期比(前年同月比)が重要だと分かっているが、速報で報じるべきは新型コロナウイルス感染症による経済への影響が無かった昨年7―9月期との〝前期比〟ではないのか?意図的なのものか?時々分かりづらく報じられる事がある。
 本紙11月23・30日号既報の、ねじ・ばね及び関連業界にとっての大手ユーザー企業各社の四半期決算の情報を時評子が収集した際、3月期(4―翌年3月)としている上場企業は決算短信において第2四半期(7―9月期)単体でなく第1・第2四半期の連結業績(4―9月期)で表記される事が多く、数値に誤差が生じるかもしれないが、連結業績から第一四半期分を引いてみた※12月期(1―12月)の場合等は同時期、もしくは近い3カ月間で計算。すると売上げにおいて、自動車、工作機械・ロボット、弱電、ゼネコン業界の企業は、今年第2四半期は第1四半期に対して〝前期比増〟だが、昨年第2四半期に対して〝前年同期比減〟であり、〝前期比増〟でありながら〝前年同期比増〟でもあったのは自転車業界とゲーム業界、そして弱電とゲーム業界両方にまたがる企業ぐらいだった。
 前述の実質GDP―、これは日本国全体が生み出した価値の総額と考えれば3カ月毎のIR=決算短信の情報ともいえる。4―6月期の当時は、新型コロナウイルスの感染・発症例・後遺症や死亡率、さらに拡散(保菌※この場合はウイルス・感染拡大)のし易さ・可能性という諸々のデータが蓄積される過渡期でまだまだ〝未知の病原体〟で、現時点である程度〝既知〟となりつつあるが、これからワクチン・特効薬開発による予防・治療法確立と並行して、日常生活=経済活動をどこまで制限するべきなのかの落としどころがやっと見えてきたのが現状だろう。いずれ発表される今年の10―12月期実質GDP。昨年と今年の4―6月期、7―9月期、10―12月期―この6点を比較すれば新型コロナウイルス感染症による経済への影響が分かるはずだ。しかし忘れてはならない点もある。昨年10月は消費税の増税があった。増税前の昨年7―9月期と、増税後の昨年10―12月期、今年7―9月期、10―12月期の4点を比較すれば新型コロナウイルス感染症だけでなく消費増税の〝爪痕〟も推測できるはずだ。

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