外国人だけでない、日本人採用の好機に

2020年11月16日

 厚生労働省が発表した今年1月に発表した令和元年10月末現在の外国人労働者数は前年同期比13・6%の増加の165万8804人で平成19年に届出が義務化されて以降、過去最高を記録している。
 外国人労働者を雇用する事業所数は、同12・1%増加の24万2608カ所で、これも過去最高を記録している。国籍別で見ると中国人が最も多く41万8327人で全体の25・2%を占めている。次いでベトナム人が40万1326人(労働者全体の24・2%)、フィリピン人が17万9685人(同10・8%)と続いている。前年からの伸び率で見ると、ベトナム人、インドネシア人、ネパール人が高い。
 ねじ・ばね業界でも規模を問わず外国人労働者を採用している企業が目立っている。筆者が取材する限りでは東南アジアの人材が多いように見える。インド人を採用しているメーカーや商社もいた。あるメーカー社長は、人材としてのタイ人や国そのものの環境変化を指摘する。現地に日本の大手製造業が進出して長い年月が経っていることから、他ASEAN諸国と比べて、日本型のものづくりへの理解や、教育機関と企業の結びつきが強いという。この指摘通りであれば、タイに限らず日本企業進出の成熟化が進む他ASEAN諸国も同じような傾向が整いつつあるといえるだろう。海外拠点をきっかけに現地の教育機関と結びつきが生まれて、日本の拠点でも、その国の人材受入れが活発化するケースもあるようだ。
 昨年4月に施行された改正入管法により新設されたのが新しい在留資格「特定技能」だ。日本の人材不足の深刻化により14分野の企業において外国人労働者の就労が可能となった。ねじ・ばね業界はこの対象となる「産業機械製造業」に当てはまる。
 これまで14分野は単純労働と見なされ、原則として外国人労働者の従事は禁止されていたが、「特定技能」の新設により、受入れを解禁した形となる。一方これまで、本来の目的から外れ事実上の安い労働力となってしまっていた技能実習制度では、今後は技能実習生を労働力としては使用できなくなる。新しい在留資格のうち「特定技能1号」は、同分野内での転職が可能で、受け入れに人数制限がない。
 さて、コロナ禍に見舞われている現在は、ここ数年続いていた売り手市場から大企業が採用を大きく絞り込んでいる傾向にある。安い外国人労働者だけに拘るのではなく、国内の潜在的な労働力、優秀な人材を如何に確保するかを検討する好機と捉えるべきだろう。優秀な技術者は給与水準が高いことの発信、そしてやはり業界で働く魅力をもっと高めていく取組みを強めていきたい。

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