確実に起こっている車のパラダイムシフト

2020年8月31日

 秋のアメリカ大統領選挙で民主党候補となっているバイデン氏は、「大企業の税逃れは終わらせる」と主張し、税法の仕組みを整える方針を掲げる。さらにトランプ政権が引き下げた法人税率をある程度戻す考えだ。富の集中が加速する中で光明となるか、注目が集まる。
 アメリカ巨大IT企業5社「GAFA+M」(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル・マイクロソフト)の時価総額が、東証1部上場の全企業の合計を超えたことが話題となった。コロナショックで変容した環境下でも強さを見せつけたメガIT企業。世界を席巻する影響力を維持し続けている。
 そしてテスラの時価総額がトヨタを上回ったことも話題となった。規模の差から言ってこの状況はかなり過熱気味のバブルと言えるが、株価=期待値と言えることから、市場がそれだけテスラの成長性を評価しているということだろう。
 テスラ車のフロントマスクはまるでシロイルカの顔のよう。つるりとしていて虚飾が無い。エンジンが無いのでグリルを必要とせず、ボンネットを開けると収納スペースとなっている。また、インテリアの操作系も大型タッチスクリーンが一枚と、かなりシンプルだ。
 現行の多くはセダン型を踏襲しているが、フロントボディはあくまで収納スペースなので未来の形は自在に変化してゆくはずだ。新幹線の顔のような流線形を獲得していく、という想像も無茶では無いはず。何より、発売を控える電動ピックアップトラック「サイバートラック」のポリゴンデザインを見れば不可能など無いと思わせてくる。
 他社を見渡すと、EV車でグリルを必要としないにも関わらずグリル風の装飾を纏っていたり、また、ハイパフォーマンス車であることをアピールするためにフェイクのマフラーを装備している車もある。そういった車の外観には確かに馴染みを覚えるし、何より「古き良き大量消費時代」の幻影を見せてくれる。しかしそれに比べ、テスラ車は自動車の固定観念や歴史を軽々と無視していて、潔い。
 同社はシリコンバレーに拠点を構え、実態はIT企業と言って差し支え無いだろう。イーロン・マスクCEOは「市場調査はしない」と言い放つ。確かに前例のない新しいものを生み出すのに大衆の意見など無意味である。
 二コラ・モーターもテスラに続き先進的な車を生み出している。確実にパラダイムシフトが起きている今、アメ車=大排気量のマッスルカーという認識はほどほどにし、現代のアメ車=先端技術車両との認識を加えた方が良いだろう。そして日本勢も40年前の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の幻影は追わないことだ。

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