毒矢と三本の矢、緊急事態の優先順

2020年7月20日

 仏教説話で、釈尊が弟子から「世界は果てがあるのでしょうか、未来永劫存在するのでしょうか等、仏道修行をする意味はあるのかを問われ、「今、何をしなければいけないのかを考える事が大切」と説く為の「毒矢のたとえ」というのがある。もし毒矢が飛んできて刺ささり、医者が来て矢を抜いて薬を塗ろうと治療する際、怪我人が「この矢がどこから飛んできたのか、どこの誰が射たのか確かめるまで、矢を抜いてはいけない」と言いだして、医者がその通りにしたら怪我人はその間に毒が体にまわって死んでしまうだろう―。 これは「緊急事態には優先順が特に大事」という解釈もできないだろうか?仏道修行でなくとも現代の救急医療におけるトリアージ(患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行う事)等に通じるかもしれない。
 今回放たれた新型コロナウイルス感染症は、病原体を鏃に塗り付けた生物的な「毒矢」とも考えられる。恐ろしいのは化学的な毒とは違い当たった者は、本人の意思に関わらず新たに「毒矢」を放ち始める点で、なお厄介だ。しかし「毒矢」に対して特効薬やワクチンはまだ開発出来ていなくとも、マスクやフェイスシールドという「盾」で一定の予防効果も証明され、感染したとしても無発症の場合もあるし、発症してもある程度の治療は行える。
 だが日本政府は「毒矢」が飛んで来ると予想できたはずなのに、2月の春節前に日本国の「城門=入国管理」を開いたままにしたどころか、招き入れたのを忘れてはならない。そして緊急経済対策として行われる需要喚起事業「GoToキャンペーン」。その一つとして国内旅行の費用を補助する「Go Toトラベル」が7月22日から予定されているが、国内(各都道府県)で「毒矢」の放ち合いを進める気だろうか?さらに入国制限の緩和も検討され、せっかく閉じた城門を、また開けっ放しにしようとしている。
 アベノミクスにおける「三本の矢」こと「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」、そして「新三本の矢」こと「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」―と政策が進められても今まで効果がはっきりしなかったが、今回の「毒矢」は効果が現れてしまうのではないか?その一方で医療従事者への夏の賞与がカットされる事態が続出しており、待遇も改善されずこのまま感染が爆発的に増加した場合、医療崩壊は現実のものとなりかねない。
 対処すべき優先順を間違えてはならない。まずは感染拡大の収束と経済的補償、次に経済の活性化、そして毒矢を放った=感染を拡大させた一部始終の確認・追及だろう。

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