中小のスピード感が武器に

2020年6月1日

 新型コロナウイルス感染拡大にともない現場で多くの命を守ろうと日々奮闘する医療関係者に敬意を表するとともに感謝申し上げます。各社で医療現場を支援する動きが広まっている。
 大手自動車グループでは自社が保有する製造・物流面でのノウハウやグローバルサプライチェーンを活かした支援を表明して取り組んでいる。不足している医療用フェイスシールドを3Dプリンターで生産、医療機器メーカーにカンバン方式による工程改善のノウハウ提供、マスクなどの医療必需品のサプライチェーンを活かした調達支援、グループ会社の医療備品の生産など支援に取り組んでいる。自動車各社が世界的に不足している人工呼吸器の製造に乗り出す動きもあるが、一時的なものではなく事業として維持していく可能性があるのか推移を見守りたい。
 大手部品メーカーでは自社で保有する医療用高性能マスクを医師会に寄付した。グローバル展開を進めてきた同社は、感染症や一部拠点で懸念されていた火山噴火リスクに備えて医療用物資を備蓄していた。日本のほか各国に精力的に物資の供給支援をしている。保有するクリーンルームを活かして国内拠点でサージカルマスクの自社生産も行うという。
 ファスナー商社が中心となり地元各社の技術を結集して、医療機器や健康・福祉機器の開発を行っている協同組合では、医療機関との連携実績を活かして施術中の飛沫感染を防ぐ医療器具を開発した。刻一刻と状況が変化する医療現場では使用する医療器具の開発はスピードが求められる。各社が保有するチタン陽極酸化技術や、パイプ曲げ加工技術、軽量化技術やレーザー溶接技術などを用いて、これまでにも医工連携で中小企業ならではのスピードを活かして、手術器具等を開発してきたこの協同組合は、今回も短期間で開発に成功している。中心のファスナー商社によると、すでに日本各地の医療機関から問い合わせや注文を受けており同社からも販売を開始するという。
 転造盤の販売、メンテナンスサービスを行う企業では、今回の感染危機により事業所の閉鎖を余儀なくされた製造業者に対して転造加工の受託サービスを開始した。自社で保有する開発用や在庫設備を使用してサービス体制をいちはやく整えた。今後もユーザーのBCP体制に組み込まれるような支援を行っていくという。
 今回のコロナ危機では大手の潤沢な支援活動のほか、中小企業ならではのスピード感を武器にした支援が目立つ。またこうした取組みはコロナ後の社会にも、ビジネスの観点で応用展開できる可能性を秘めている。変化が好機となる45年目の「ねじの日」を迎えた。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。