雇用格差是正の流れ 原資確保に知恵を絞ろう

2020年5月11日

 本紙が今春実施した当業界の採用状況調査では、新卒採用の割合が減少し、パート・アルバイトの採用が増加している傾向が伺えた。数年来の売り手市場(学生側有利)の中で、新卒採用は計画に届かなかった企業の多さもデータに表れていた。
 パート・アルバイトの年代別では30代~40代が多くを占めたことから、主婦層が活躍している様子が伺える。時に現場で女性が製造機械を扱っている様子を見受けることもある。労働人口が減少している中で、職種や働き方に対する固定観念が変化しているとするならば、政府の言う「一億総活躍社会」に向かっているという表れなのだろうか。
 大企業では4月から同一労働同一賃金の取り組みが開始し、中小企業においては来年4月からの開始が決定している。基本給や賞与、手当てなどあらゆる待遇について不合理な待遇差を無くしていこうという動きだ。厚労省の発表では「正規、非正規間の不合理な待遇差の解消を目指す。どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようする」とある。
 要は仕事の内容や賃金について雇用形態間のバランスを取っていこうということで、ここで持ち上がるのが非正規社員の待遇は向上するかも知れないが、正社員の待遇は悪化するのでは、との心配である。しかし、基本的に労働条件の変更には合意が必要なので、会社の都合で一方的に待遇を悪化させてはいけない(不利益変更の禁止の原則)。もちろん人事評価の結果として労働条件を下げるなどはその会社があらかじめ決めていた制度内の話なので問題はない。それ以外に労働条件を下げる場合は、話し合いで合意を得るか、就業規則の変更が合理的である必要がある(必要性があるか等)。
 働き方改革の根底には、人口が減少する中で労働人口を増やしたい狙いがある。そこで、非正規社員の待遇を引き上げて、なり手を増やそうという動きが本来の同一労働同一賃金だ。ただし、地方自治体では次のような例もある。非正規職員に対して賞与を出す代わりに、本給を減額し、当人の生活がさらに苦しくなるという本末転倒の事態だ。このような状態であれば本来の目的は達成できるはずがない。
 強い会社ほど労働条件を改善させていき、人が集まりやすくなり、さらに企業価値が向上していく好循環が生まれる。当然のことだが、それを実現するためには原資が必要となる。どうしたら利益率が向上するのか、どうしたら無駄を省くことができるのか、雇用形態を問わず一丸となり昇給原資の確保に向けて知恵を絞って行動するべきだ。会社のお金には限りがあるが、会社の成長に限りはない。

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