研究開発の動き加速

2020年5月4日

 製造業の各社で研究開発拠点を開設する動きが加速している。短期的な生産・販売に影響されることなく、独立した研究開発を進めることで、中長期的な視点で製品の開発、新事業を生み出していこうという狙いが見える。
 ファスナー業界でも近年、拠点の新設や既存施設の内容を充実して研究開発スピードを上げようとする取組みが各社で見られる。
 17年にテクニカルセンターを開設した、あと施工アンカーメーカーでは、これまで営業部隊と連携してユーザーの声をもとに製品を改良する商品開発部隊がいたが、これとは別のチームとして同拠点を設置。ゼネコンなどユーザーと連携しながら中長期的な視点で今まで市場にない画期的な製品や工法を研究していくという。
 医療分野を新しい成長市場ととらえて、この分野をターゲットにした研究開発に乗り出すファスナーメーカーもある。同社では参入に向けて最初の壁となる医療機器製造等の各許認可を取得。既存の工場を改築してクリーンルームを設置した専用工場を開設したほか、研究開発棟を設置。医療機器の販売開始に向けて準備を進めている。
 生産機能を持った本社工場を研究開発のコア拠点にシフトさせようと取り組むメーカーもある。コア技術となる塑性加工をテーマにして、チタンやニッケル合金といった難加工材への試作や、金型の内製技術など、目先の需要ではなく研究を先行した開発を進めるという。本社工場にあった生産設備の多くは主力の生産拠点へ移設。本社工場はリスクヘッジとして一部生産機能を残すが、研究開発拠点としての性格を強めていく。
 アイデアを出し合いながら今まで自社になかった柔軟で新しい発想を皆で生み出していこうと社内に「イノベーションハブ」を開設したメーカーもある。イノベーションハブとは職種や立場の垣根を越えた人材が集まり知恵や技術を結集して新しい革新的な製品やサービスを生み出す考え方だ。自動車産業を主力にする同社では、自社技術をまったく新しい分野に活かせるのではと模索している。
 上記の事例は大手ファスナーメーカーではあるが、小規模メーカーの中でも現場の一線から退いた社長がノウハウを活かして新しい発想の加工法を開発、特許技術として取得するといった動きも見られる。
 数年先に自社製品は求められているかどうか、求められていないのであれば、それに替わる事業の柱を持っているか。企業を永続していくために、中長期的な視点で自社技術・製品を見つめ直す能力が求められている。

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