デマに惑わされない正しい判断力と行動を

2020年3月23日

 デマゴーグや間違った情報に惑わされない、正しい判断力を身に付けたい。
 古くは、アメリカのラジオ放送の騒ぎを思いだす。ラジオドラマ「宇宙戦争」だ。火星人が地球しかも米国に攻めてきたと心拍迫った内容で、しかもニュース放送の形式で現地のレポーターが生中継するという演出をしたものだから、これを聞いて信じた地域住民たちが車で逃げだし渋滞騒ぎを起こしたというものだ。時折笑い話にもされるが、しかし脱出を試みた本人たちは緊迫した面持ちだったであろう。
 熊本地震の際も、動物園が被災してライオンが壊れた檻から逃げ出した、と写真付きでデマの投稿がなされ、流した本人は遊びのつもりだろうが一時警察が現場確認に出動する騒ぎにまでなった。ただでさえ地震で人々と家屋が災害を被っている最中まったくもっていい迷惑である。
 今年はトイレットペーパー、ティッシュペーパーの買い占め騒動だ。これも一通の間違った情報から始まった。マスクもトイレットペーパーも同じ紙であるから紙類が品薄になるというものだが、投稿した本人は本気でそう思って世のため人のために書いたのか、それとも騒動を起こす意図で書いたのか、真意はわからないが、いずれにしてもそれを読んだ人々は翻弄されてしまう。製紙会社が十分な在庫があることと冷静な判断を行うことを国民に呼び掛けてもなお、物流面が追いつかずに店頭での品不足が続いている。
 不思議なことに、デマを信じた人々のみならず、デマだとわかっている人々も買いだめに走っているというのだから、人間の集団心理というものは複雑だ。専門家が社会学的見地・心理学的見地から言うには、デマを信じていない人々が、デマを信じている人々がおそらく買い占めを始めるだろうから先に多めに買っておこう、と合理的判断をしたつもりが、このために実際に品不足を引き起こすという。東日本大震災の時は、日本人の冷静さが世界から賞賛されたものだが、なぜ今回は大震災時と異なってこのような事態になったのか、その違いは何なのか、その辺の心理分析も今後研究対象とされると思われる。
 特に現代はSNSの発達によって、多様多種の正しい情報と間違った情報とが入り混じる時代になっている。簡単に情報を発信できる時代になって便利ではあるものの、間違った情報も簡単に流せる。また、文章のみならず写真・画像の加工までも簡単になり、本物と偽物の見分けが付きにくくなっている。数多の情報が飛び交う中で、我々はどれが正しい情報なのか、そしてどう行動すれば社会的混乱をもたらさずに済むのか、正しい判断力を身に付けたい。

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