不都合な真実と向き合う

2020年3月16日

 馬鹿…語源は諸説あるが「鹿を指して馬と為す」の故事といわれる。秦の始皇帝が死んだ後、家臣の趙高が他の家臣が自分に従うかを見極めるべく、二代皇帝の胡亥に「馬」と言い張って鹿を献上し、他の家臣が「馬」と言ったら重用し、「鹿」と言ったら粛正したそうだ。この言葉は本来「知能」よりも「事実に対してどう向き合うか」の意味合いが強いのだろう。
 そんな逸話から2000年以上。似たような事は繰り返され、最近は大躍進政策で党中央からの農工業製品に対する無理な増産計画により、各地の幹部が功を争い実際の生産量に対し過剰申告や作物を田畑に集めて写真を撮り虚偽宣伝が横行。その結果、報告された生産量を前提に輸出量が決定され結果的に飢饉(飢餓輸出)を起こした。
 上の者に気に入られれば、機嫌を損なわなければ、不都合な真実=事実なんてどうでもいい。しかし最終的には辻褄が合わなくなって、どこかで破綻する―。
 アベノミクスが始まったといわれ早8年。2月7日に、17日発表予定となっている去年10~12月期のGDP速報値について西村康稔経済再生担当大臣は会見で、「10月の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその後の落ち込みは大きくないと見ていたが、台風や暖冬の影響がある。海外経済の下方リスクもあり、百貨店や自動車の販売等も、数字としては低い数字が出てきている」と見解を示した。
 しかし17日の発表では、前期比1・6%減、年率換算で6・3%減(物価変動の影響を除く実質)と、5四半期ぶりにマイナス成長に転じ、年率でのマイナス幅は2014年4~6月期(7・4%減)以来の大きさとなったが、西村大臣は「本来であれば緩やかな回復が続くはずだった」、そして1~3月期については「新型コロナウィルス感染症による影響等に十分注意する必要がある」と話している。
 台風は通過した地域に限定、暖冬は季節の一過性だが、今回増税した消費税、そして東京オリンピック開催に際し「復興アピール」がされているが何故か廃止されない復興特別税等、税制は季節に関係なく全国一律で継続的に消費を滞らせる。どこかで情報の伝達や見極め方が誤っているのではないか?そろそろ「税制が経済の足かせになっている」と素直に認めるべきだろう。
 1月~3月期はおそらく感染症が経済に少なからず影響するが、中国で本格的に感染拡大したのは1月以降、日本では2月以降で、大きく因果関係は見出しにくい。主権者たる国民へGDPマイナス成長の原因が、台風や暖冬に続き「消費税でなく感染症〝だけ〟が原因」と、「〝マイナス成長〟を指して〝緩やかな回復〟と為す」かもしれない。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。