収束見えぬ新型肺炎、更なる悪影響を懸念

2020年3月9日

 新型コロナウイルスを巡る混乱が続いている。中国の武漢市から始まった流行は今や世界各地で感染が見られるようになっており、特に韓国とイタリアをはじめ複数の国が深刻な事態に陥っている。日本国内でも連日新たな感染が報じられ、集団感染を防ぐためイベントの中止もしくは無観客による実施、あるいは施設の閉鎖など社会的にも大きな影響を及ぼしている。当初中国国内の感染を「対岸の火事」として捉える向きもあったが、今や完全に日本は当事者の一人となってしまった。
 本紙に関連する催しでも国内をはじめ海外でも催しを中止もしくは延期する動きが見られ、例えば4月に台湾・高雄で開催される予定だったファスナーショーの延期が決まっているほか、独・デュッセルドルフで開催される「wire2020(国際ワイヤー産業展)」も同じく延期が決定している。先月末東京で開催されたある展示会は来場者全員にマスク着用を求めるなど厳重な警戒の下行われたが、残念ながら出展を取り止める企業は多く、例年の賑わいを思うと寂しい内容となっていた。
 本稿執筆時点では連日感染者数の増加が報じられるばかりで明るい兆しは見えず、また適切な対応が取られているとは言い難い様相を呈している。今月2日からは政府の要請により児童や生徒を対象として急遽休校措置が決まったが、最終的な判断を各自治体に委ねたことで現場が戸惑い、却って混乱に拍車がかかった感が否めない。クルーズ船の対応でも経過観察することなく乗船者を帰した結果、陰性とされた乗船者が後に陽性と判明するケースが散見されるなどこれまでのところ対応が都度後手に回っている。
 2月末には米政権が日本に対して入国禁止措置を検討している旨報じられたが、対応を誤れば入国禁止は十分あり得る事態だろう。仮に米国が入国禁止措置を取った場合他国も倣う可能性が高く、世界から“封じ込め”を受ける事態となった場合経済をはじめ経済や人的交流にどれほど甚大な被害をもたらすのか想像もつかない。また東京五輪の開催にも極めて悪い影響と印象を及ぼすことだろう。日本経済は一昨年の秋頃より停滞状態が続き、景気後退を指摘する声も出ている。これ以上疲弊させないためにも政府は今以上に危機感をもって対応に取り組むべきだ。
 なおSNSをはじめウェブ上では感染者の偽情報や“コロナウイルス完治”を謳う商品を扱う出品者が現れ販売停止処分を受けるなど混乱に乗じたデマが散見されている。誤った情報に惑わされないよう注意したい。

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