新型肺炎でわかる製造業の中国依存

2020年2月24日

 新型肺炎の感染拡大が製造業にも影響を及ぼしている。感染源と言われる中国湖北省にある武漢市では人・モノの移動が制限されており封鎖がいつまで続くのかわからない状況だ。感染者は武漢市のある湖北省のほか浙江省、広東省、河南省、湖南省、安徽省、江西省でも増加していると言われ、こうした地域では工場の休業・閉鎖が相次いで発表されている。日本でも感染が拡大しており収束の見込みがつかない。
 ジェトロによると、広東省広州市や深セン市、上海市、北京市、重慶市、四川省成都市では住民の出入りを通行証などで厳重に管理する封鎖式管理を実施している。一部の都市では、管理当局から出勤を控えるよう要請されるなど、従業員の勤務に支障が出るケースもあるという。
 武漢市にある日系自動車メーカーでは春節休暇からの操業開始を当初2月3日としていたが、湖北省の通達を受けて操業再開を14日以降としていた。延期、また操業再開する企業など各社で状況が別れているが、いずれも先行きは不透明だ。武漢市では完成車メーカーのほか自動車部品メーカーも多く集積している。部品メーカーの工場停止による影響は武漢市に限らず、その他地域、国にも飛び火している。
 自動車産業が集積している広東省の広州市でも日系自動車メーカー各社が工場の稼働再開を17日以降に延長しており、ここでも本格生産には時間がかかる見込みだ。IT、スマートフォンなど先端産業の集積する深セン市でも、操業再開は10日以降としたメーカーがある。
 中国製の部品を輸入している日本国内の自動車メーカーでも完成車や部品工場の一時停止が相次いでいる。サプライチェーンの混乱により中国からの部品が調達しにくくなっているためだ。
 武漢市から離れた地域に工場をもつ日系ファスナーメーカーでは、春節で武漢市に帰省した従業員がそのまま戻れない状態が続いているという。他メーカーでは工場停止により「2月中の売上がほとんど出ない可能性もある」と指摘。「日本を含む中国国外の組立工場に影響することを想定しておく必要がある」と指摘するメーカーもある。
 日本では自動車部品輸入の3割超が中国からの輸入だ。ファスナー産業を見ても、輸入ねじ類の5割以上(数量ベース)が中国からの輸入と推計できる。世界、また日本の製造業が中国に大きく依存していることが、新型肺炎の感染拡大をきっかけに改めて示された形だ。中国から日本への生産移管の話が既に出ているようだが、中国ファスナーメーカーと同等の量をこなせないといった嘆き節も聞こえる。サプライチェーンの依存度の軽減など想定外を想定した対策が必要だ。

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