令和元年を振り返る

2020年1月12日

 今年の漢字は「令」となったそうだ。新元号が「令和」となったことを受けたとの説明も見られ、確かに今年は一つの時代が終わり、新たな時代の幕開けとなった年だった。一年を象徴する一文字として「令」はまさにふさわしい…と思えないのは時評子だけなのだろうか。確かに今年は記念すべき令和の元年だった。しかしこと景気に焦点を当てるならば、それ以上に平成の時代を引きずり、平成の課題を意識せざるを得ない一年だったとは言えなくはなかろうか。気候変動による災害、人手不足や後継者問題、政治に大きく左右される経済情勢、等々、近年俎上に上げられる諸問題が暗い影を落とし続けた1年でもあった。景気の見通しは依然として不透明であるばかりか減速を指摘する声も多く、来年も厳しい情勢が続きそうである。
 平成の課題を引きずりながらも、他方で日々を取り巻く技術はITを中心としてまさに新時代を迎えようとしており、今後産業は大きく変わっていくものと思われる。もちろん今に始まったことではないが、自動車産業ではEVをはじめとした新エネルギー車の開発が更に進み販売台数の比率が動くことで既存部品の数量が変動し、サプライチェーンにも大きな影響を及ぼすことが予想される。またしばしば話題に挙がる次世代の通信システムである「5G」は既存の4Gよりも1000倍の速度で通信が行えると言われており、いわゆる「ヒト・モノ・カネ」の流れが変わることは必須だ。
 ねじ商社は80年代以降自動倉庫とITの導入によりその姿を大きく変えてきたが、近い将来同じような変革が起こるのだろうか。ITは進歩が目覚ましい分陳腐化もまた早く、故にITに頼ったサービスを維持しようとすると継続的な投資が要求される。至極単純に考えるなら4Gしか活用できないサービスと5Gも利用できるサービスでは速度に1000倍の開きがあることになりそれだけ差が開くことになるが、こういった思考の真偽も含めて5G黎明期には様々な軋轢が生まれることが予想される。
 2010年代も残すは10日を切り、時代の変換点と技術の変換点が交わる20年代の幕開けがすぐそこに迫っている。来年はオリンピックイヤーであり、またねじ業界では複数の業界団体が節目の年を迎えるなど記憶に残る一年になりそうである。そして冒頭にも触れた通り平成の宿題はまだ続いており、今後も「ヒト(省人化や人材確保)」、「モノ(自動化、品質向上)」、カネはひとまず脇に置いたとして、「コト(技能継承や世代交代)」の全方位において改善を余儀なくされていくのは間違いないだろう。今年も無事年末を迎えることができたことを読者諸氏に感謝しながら令和元年最後の時評を締めくくりたい。

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