景気、大企業は成長、中小企業は横ばい

2020年1月12日

 今年一年の景気を総じてみると、大企業は増収増益、中小企業は横ばい、といったところだ。毎年、似たような傾向が続いているが、いつになったら中小企業にも恩恵が回るのだろうか。特に大手の建設会社は潤っている。オリンピック景気だというが、中小企業の間では本当にオリンピックが開催されるのだろうか、といった景気感ですらある。
 大企業の内部留保の活用が重要だ。リーマンショックを経験して以来、大企業の内部留保率は上昇しているが、消費者や中小企業へそれが回ってこない。恐慌に備える心理はわかるが、回さないことには経済は回らない。経済成長とは経済学的には総付加価値の成長のことだが、言い換えれば貨幣の循環量とその循環速度のことである。蓄えているばかりではだめなのだ。
 今年の消費税10%への引き上げに関しては、延期を二度行ったのち、政府にしてみればようやく引き上げに漕ぎ付けたわけだが、消費税3%の時代から見れば隔世の感がある。よく10%まで上げられた、経済が持ちこたえられたものだと。しかし、これからの高齢化社会・少子化社会を生き抜くには、財政上さらなる引き上げが必要だとの見解もまた多く聞かれる。
 3%、5%、8%、10%と漸進的・段階的に長期間をかけた引き上げによって経済を順次慣れさせ、これに伴って全体的には巷の商品価格は上がってきたが、値下げ競争が激しい分野では、企業がのまざるを得なく、消費増税というよりも実質的には法人増税となってしまう。体力の強い企業ならまだしも、中小零細になればなるほど企業にとっては厳しい時代だ。高負担といえば世界的には北欧が有名だが、日本のような工業国で1億人超クラスの国では、これ以上の消費増税がはたして経済の均衡を保ちながら実現可能なのか、慎重に検討されたい。
 来年こそはお金が回る年となるよう、期待したい。これがあるかないかで、オリンピック後の景気に影響しようというもの。これにはある程度、政治の力が必要になってくる。自由経済の神の手頼りのみでは、弱肉強食の持つ負の側面と、消極的な内部留保のみが際立ってしまうからだ。
 また、自主努力としては各企業は労働力の確保と生産性の向上に取組まねばならない。外国人材や女性・高齢熟練技術者の活用はもちろんのこと、かつてパソコンやIT・ソフト類がそうであったように、一般の鉄工所にとって必要なさそうに見えるAIによる生産活動の解析や生産管理、ロボットなどがいずれ夢物語ではなく当たり前に必要な時代となるであろう。いち早く時代の流れについていく企業が生き残る。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。