前途多難な「特定技能」政府は早急に対応を

2020年1月12日

 新たな在留資格「特定技能」を新設する改正出入国管理法が今年4月1日から施行されてから半年が過ぎた。特に改正前には大いに世間の注目を集め、在留外国人の増加が予想されることから一部からは不安の声も聞かれたが、蓋を開けてみれば9月末時点で特定技能を取得した外国人の数は数百人程度に留まっており、政府が目標として掲げていた「5年間で34万5000人」という数字からは大きくかけ離れる形となっている。在留資格の中にはまさにねじ業界を対象とした「ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業」も含まれているが関係者の中で受け入れを前向きに検討する声はあまり聞かれず、ある関係者からは「来てもらっても5年で帰ってもらわれては困る」という声も飛び出した。ひとまず制度の内容は置いたとして、ここまで目標から離れていると達成はおろか制度の存在意義が疑われかねない。
 外国人労働者の受入れが進まない一方、人手不足は依然として深刻な状態が続いている。制度が現状と噛み合っていないのであって決して受け入れが不要となった訳ではないのだ。日本商工会議所は政府に向けて10月中旬に「外国人材の受け入れ政策に関する要望について」と題した要望書を取りまとめており、その中では外国人材の受け入れに対するニーズが高まっていることを指摘した上で要望として制度の周知や受け入れに関する相談機能の強化、外国人人材とマッチングする機会の提供、また受け入れを検討している企業の支援といった項目を挙げている。また受け入れ分野の拡大も要望の中には含まれており、深刻化する人材不足に対応する手段の一つとして外国人材が必要とされていることが分かる。景気後退が明瞭となっている中、特に人材不足の深刻化が著しい中小企業をこれ以上疲弊させないためにも政府は早急に対応すべきだ。
 さて、日本中を熱狂の渦に包んだラグビーW杯が閉幕して半月程が過ぎた。開幕したのは1年の終わりが見えつつある9月下旬であったのにも関わらず、今年の「流行語大賞」候補にW杯関連の言葉が複数ノミネートしていることからもその影響力の高さが伺える。その中には多国籍チームでもある日本代表が掲げていたテーマ、「ONE TEAM(ワンチーム)」もまたノミネートされているが、国籍を問わず全員で強豪に向かっていった日本代表の姿は企業の意識を変えるだろうか。関西の業界団体では今年10月にベトナム現地の人材送出し機関を視察するなど前向きな動きも見られる。特に言葉の壁をはじめ乗り越えなければならない課題は多いが、今後も外国人材の活用について考えていかなければならないのは間違いないだろう。

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