政治も経済も信用が大事

2020年1月12日

 時評子は企業を取材や訪問の際、一事業者としてねじ・ばねや金属加工業・製造業についてだけでなく、一市民として地域の景況感や行政等についても聞く事がある。
 最近、神奈川県で取材の際気になって聞いてみたのが、カジノをはじめとするIR(統合型リゾート)誘致構想だ。この計画、「IR是か非か」と同時に、その経緯が問題となっている。以前からIR構想に対し「白紙」と表明していた現職の林文子横浜市長が、7月の選挙で再選後に「推進」を表明した事に対し「手のひら返し」と揶揄されているが、やはり有権者としては期待されている経済の活性化以上に、治安の面を疑問視している様であった。
 有権者は政治家ではなく政策を選びたいはずで、それを実行してくれる民意の代理人として首長・議員を選ぶのが選挙のはずだが、選挙制度があっても民主主義が機能不全を起こしているとしか思えない。
 これは全国区でも同様で、7月の参議院議員選挙前に取りざたされた、6月に金融庁が試算した「老後は年金とは別に2000万円必要」と試算する通称「2000万円問題」。これにより年金に対する国民の不信感が高まった為か、本来は参院選前の6月に公表するはずだった「年金財政検証」は、何故か参院選後の8月に延期された。もし「年金財政検証」が予定通り公表されていたら?参院選の結果は大局に影響はなくとも、少しは変わっていただろう。そう考えると選挙結果の公正さ、議員としての正統性に疑問が持たれてしまう。
 正確な情報が無ければ、それに基づいて正確な判断・行動はできない。「社会契約論」を記した思想家ルソー(フランス)の言葉に「有権者は選挙のときだけ王様で、後は奴隷である」とあるが、もはや選挙の時すら王様で無いか、奸臣に囲まれ報告されるべき情報を知らされず、預かり知らないところで政務を進められている王様―となっている。
 これは現与党(自民党)に限らず現野党(集合離散を経ているが立憲民主党・国民民主党)であろうと、時の政権となると大概「不都合な情報の非公開(隠蔽)」という、悪い意味での秘密主義をとりがちだ。
 政治でなく経済活動においても、企業が総会・株主総会の際に、事業環境についての情報、それに基づく次の任期・決算期についての事業計画=政策、これからの展望・予測について説明して信任を問う。その際に情報を開示せず、経営陣=内閣(行政)を掴みどころのない「人柄」だけで信任を問うのは無理だと思える。
 不都合であろうと情報を公開し、公明正大に振舞わなければ、自らの立場・権限の根拠となる信用・信任は得られないはずだ。

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