貿易摩擦に揺れる中国ねじ市場

2020年1月12日

 前回(2018年)よりおよそ半年後の開催となった「中国国際ファスナー展(IFS China 2019)」は、現在の中国経済を反映しているかのような内容となった。主催者によれば今回は3日間で海外からの来場者およそ4000名を含む3万6080人が訪れたとのことで前回(2万5637人)よりもおよそ1万名増加した形だ。しかし、あるいは会場が広くなったということもあるかもしれないが、会場では残念ながら前回ほどの活気を見ることはできなかった。関係者からは特に貿易摩擦の影響を指摘する声が多く挙がり、中国に拠点を置いているある機械メーカーからは「関税等で影響を直接受けている」という苦しい声も出てきた。先に大阪で開催されたG20大阪サミットでは米中首脳会談が行われ、ひとまず関税の発動は見送られる形となったが経済情勢が先行き不透明であることに変わりはない。これ以上景気後退を招かないためにも二国間での協議が進むことを期待したい。
 同展の展示内容としては前回同様「ねじ製品」と「製造設備など関連製品」に分けられる形となった。このうち特に圧造機など関連製品が展示された第1ホールでは前回とうって変わって中国企業が目立つ形となり、特に中国圧造機メーカーの増加は目を見張るものがあった。また、台湾の圧造機メーカーからは新製品としてIT技術を活用した生産管理システムを展示している企業が複数見られた。日本は先進国の中でITの活用が遅れていると言われているが、周辺国では韓国・台湾をはじめ特に中国は近年IT技術の発展が目覚ましい。ねじ産業において中国が今後どのようにITを活用していくのかにも注目していきたい。
 一方ねじ類が展示された第2ホールは一部台湾など海外メーカーの姿も見られたが、こちらは前回同様大半が中国のメーカーで占められていた。展示製品としては一部「自動車向け部品」と銘打たれた展示や航空機用ファスナーも見られたが、多くは各国の規格に対応した標準品で中でも土木・建築向けのねじ製品が多い印象だった。近況について訊ねたところ、ある太径ねじ専業メーカーからは「当社はヨーロッパ向けが多いため影響は少ないが、アメリカ向けが中心だと厳しいのでは」という声も聞かれ、やはり貿易摩擦の影響が伺えた。
 同展の告知記事においても紹介したが、中国のねじ市場は近年平均4・5%の成長率となっている一方で2017年時点において平均価格は1㌧あたり76㌦低下しているという。また主催者は今後5年間でねじ製品の価格は下がるという見方を示している。米中貿易協議の行方を注視しつつ、今後の中国ねじ市場に引き続き注目していきたい。

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