懸念と期待感からむソケットスクリュー市況

2020年1月12日

 2019年度のソケットスクリュー(六角穴付きボルト)業界は、懸念と期待感が織り交ざった状況のようだ。ソケットスクリューメーカーで構成する日本ソケットスクリュー工業協同組合(以下、ソケット協組)は、今年5月に行われた総会で19年度の共同販売事業を前年度比4・7%増の54億円を計画した。メインの需要業界である工作機械は米中貿易摩擦といったマイナス要因を含んでいるものの、東京五輪を中心とした国内需要の活性化への期待感がプラス計画の後押しをした。
 共同販売事業で販売する製品は六角穴付きボルト(JIS B 1176)、六角穴付き止ねじ(JISB 1177)、六角棒スパナ(JIS B 4648)。いずれの製品もそれぞれ前年からプラスの売上を計画している。
 世界的なものづくりの自動化・省力化ニーズに引っ張られて工作機械受注が10年ぶりに過去最高を更新した17年度(1兆7803億円)に引き続き、18年度も好調に推移してきたものの、年度後半から失速。これにより受注は1兆6891億円と前年度を上回ることができなかった。ソケット協組も目標にしていた55億円の共同販売が未達に終わり53億円の実績に留まった。さらに足元の工作機械受注を見ると、5月までの受注累計(速報値)は前年から27・6%減で推移しておりマイナス基調が続く。
 この状況は米中貿易摩擦により工作機械需要の4割を占めている中国市場の減速が主たる要因となっており、今後も両国の動向を注視する必要がある。一方で、日本の工作機械メーカーは国内生産が中心で、一部中国の現地工場で生産している製品も米国に輸出するものは限定的であり影響は少ないとの楽観的な見方もある。しかし貿易戦争中の両国のいずれか一方でも景気後退すれば、世界のサプライチェーンの影響を及ぼし、日本の工作機械業界にも降りかかってくるだろう。
 こうした状況の中、ソケット協組は18年度目標の55億円を下回るものの、同年度実績を上回る54億円を目標に掲げた。前述の通り、翌年に控えた東京五輪を起因にした国内景気の活性化を期待しているためだ。
 総会資料によると、インフラ開発など公共事業の拡大や工作機械のほか、自動車、建機、油圧、空調機器、電気製品の業界にも好機が訪れることを期待するとしている。さらに工作機械業界は、これまでの自動化・省力化というテーマからさらに進化して、AIやIoT、FAを包括的に取り入れた「スマート工場」に組み込まれる製品が求められてくる。ソケット協組ではこの「スマート工場」もキーワードにして、主要仕向け先の需要動向を注視していく構えだ。

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