平成から令和へ、時代をまたがる課題と変化

2020年1月12日

 平成最後の、とあらゆる場所で言われるが、今回この時評も平成最後となる。平成から令和へと時代が移ろうとする中、ねじ業界を取り巻く環境では、時代をまたがって残される課題として人手・人件費の問題とボルト・ナットの規格の問題が、変化として国際情勢が挙げられる。
 平成の始まりはバブルの絶頂時であったが、ほどなくバブル崩壊を経験し、再度、平成の間にリーマンショックまで経験すると、人件費において企業は用心するというもの。リーマンショック後、利益の比較的早い回復に比べ、人件費の回復は遅いペースとなっている。内部留保を確保して、もしもの恐慌に備えるためだ。これに加え、材料高・光熱費高も経験し、せっかく回復した利益をも圧迫するようになると、ますます人件費を増額する余裕がない。しかし人手不足に直面するなか、人を繋ぎ留めておくには人件費の底上げが求められる。平成の間に解決できなかったこうしたジレンマを抱えながら新時代を迎えるわけだが、令和の時代こそ、業界の発展のためには生産性・業務効率の向上、省力化・自動化の推進、外国人材等の活用を通じて、きっと解決せねばならない。
 また、同様に残されたままの課題として六角ボルト・ナットのJIS規格改正問題・附属書問題があるが、しかし人手不足の問題とは対照的に、ここのところ議論の勢いが減速しつつあり停滞気味である。改元の今年はしばし様子見の年となるであろう。しかし令和の時代、いずれ再び本格的に議論がなされねばならないことは容易に予想されるものであり、再議論に備えて各団体・各社では常に解決策について思考を巡らせておかねばならない。
 一方、変化と言えば国際情勢であろう。これまでも平成の時代、ねじ業界において新興国企業からの輸入品や日本からの新興国への海外進出と言えば、まず中国・台湾から始まり、その後次第に人件費・価格面から東南アジアへと拡大・シフトを経験し、平成の終わりに来て今度はインド等南アジアが台頭の兆しを、ちらと見せているところである。この流れは、令和の時代には一層顕著なものとなるであろう。各企業では情勢に応じて柔軟に対応が求められる。また、先進国との交流も見られ、(一社)日本ねじ工業協会では長く参加してきた日・韓・中・台・香の五地域大会から今年脱退を決め、ドイツねじ工業協会との交流を目指している。まずは幹部間での協議だが、これが一通りまとまれば令和の時代は本格的な日独交流の時代となる。日本と同様に、高度な自動車産業を持つドイツであれば、両国が同じ様に抱える課題を問題意識として共有して議論でき、また先進のインダストリ4・0の現場から学ぶなど、利益を享受できる。

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