人材不足の今、既存人員の定着を

2020年1月12日

 新年アンケートで人材不足問題を取り上げたが、7割超で人材不足との回答を得た。新たな人材を得ることが必要であるが、なかなか人材が集まらない現況にあっては、まずは足元を固める事、すなわち現在の社員たちの流出を防ぎ、その能力を活用することが重要となる。今いる人材の確保・定着の方策は何か?というと問いに対し11の選択肢(自由記述欄あり)のうち、寄せられた上位三位は、職場環境の改善が一位、給与・手当の増額・制度変更が二位、有給休暇取得の推進が三位であった。
 職場環境の改善について、これは物理的な改善と精神的な改善とが両方含まれる。物理面では空調設備・LED・休憩施設等の設置や改築、また、機械間の幅員・通路の拡大、充分な休憩時間、5S活動等による安全な工場環境の確保だ。精神面では、意思疎通の活性化によるより良い人間関係の構築、パワハラの防止、自分の意見を提案できる風通しの良い職場環境作りに努めたい。気合いで乗り切る世代からすれば軟弱な時代に思えるが、しかし生き残るには企業も柔軟性を持って時代に適応する必要がある。
 給与・手当については、その増額はシンプルかつ直接的な効果を得るものではあるが、人件費の増額は収支上、際限がある。新年アンケートでは定期観測として、売上・数量・収益についても調査しているが、売上・数量の増加に比し、収益の伸びは芳しくなかった。材料・関連資材の価格上昇ばかりか、人件費の上昇も影響しているものと考えらえる。業界で給与の上昇がいずれ飽和状態や横並びとなったとき、他の業界やライバル企業との差別化のためには、給与面以外の魅力で訴求しなければならなくなるだろう。
 有給休暇の取得については、これまで日本の企業文化では風邪や怪我の備えでしかなかったものが、余暇を充実させるものと認知されるようになってきたのは従業員にとって良いことだ。さらに、労働基準法改正による年5日の取得義務が取得率を引き上げるであろう。一方で、経営側にとっては、ただでさえ人手不足のところ一人あたりの労働時間が減少してしまうのは苦しい。かといって、旧態依然の勤務体系では人材が流出してしまうし、実に板挟みの状態である。有給を認め、これを前提に稼働・営業するとなると、より一層、通常業務の効率化を図ること、ならびに既存社員の再教育・再配置を行って戦力を向上させることが急がれる。
 新年アンケートでは四位以降、残業の削減や、社員交流イベント、定期面談、資格支援、正社員化、育児支援など、様々な取組みが並ぶ。弊紙ではユニークな取組みや改革の成功例など、個別企業の事例も取り上げていきたい。

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