外国人受入れ、安い労働力には限界も

2018年12月10日

 外国人労働者の受け入れ拡大をテーマに国会で論戦が繰り広げられている。受け入れ拡大を目指す与党と「移民政策」だとして反対する野党の構図は、一見すると保守・リベラルの逆転現象にも見える。
 人手不足が深刻になっている日本。都心のコンビニエンスストアでは店員の名札を見るとほとんどが外国人だとわかる。電子決済や顔認証システムを活用した無人店舗の計画も進められていると聞くが、現状コンビニ業界では外国人がいなければ成り立たなくなっている。
 中小企業庁の発表によると、人手不足は2009年をピークにして全業種においてマイナスに転じており、13年第4四半期以降、全ての業種において従業員が「過剰」と答えた企業の割合を、従業員が「不足」と答えた企業の割合が上回っている。中小企業の抱える経営課題を見ても「求人難」を挙げた企業の割合がここ数年で増加を示しており、80年代後半から90年代初頭の景気拡大期に迫る水準となっている。
 人手不足の原因は少子高齢化と労働需要の高騰だ。対策としては業務効率の向上、企業イメージ・ブランド力の向上、教育制度の整備、働き方改革など職場環境の改善―などが挙げられる。多様な人材の活用もそのひとつであり、その中で外国人労働者の活用も選択肢のひとつであろう。
 ただ、今国会で論戦している様子を見てみると、外国人労働者の受け入れ拡大こそが人手不足の画期的な対策になるように聞こえてくる。外国人労働者の受け入れとは、つまり安い労働力の獲得だ。しかし安い労働力には限界がある。リーマンショック以降盛んであった海外シフトも今、中国では賃金上昇によりその対象国とはなっていない。爆買いに日本にやってくる中国人観光客を見ればその理由はすぐに納得できる。安い労働力を求めて東南アジア、メキシコ、南米、そしてアフリカ―。その先には何があるのか。外国人労働者は数年間の一時的なカンフル剤になるかも知れないが恒久的な人手不足対策とはならないだろう。
 「人財」といわれるように人が企業にとって貴重な資産であることを我々は理解し始めている。日本人・外国人問わず、いかに安く雇うかではなく、優秀な人材を育てて良い給料を払える企業にいかに発展させていくかが重要であろう。
 先日に読者に発送している本紙新年号のアンケート調査も、今回この人手不足をテーマにしている。調査により業界特有の現状も見えてくるはずだ。本稿をもって読者の回答のご協力をお願いしたい。

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