列島襲った「災害ラッシュ」防災考える機会に

2018年9月24日

 「今年の漢字は『災』となりました」―。今年はまだ3カ月ほど残ってはいるが、突然そのようなニュースが流れても納得してしまうのではなかろうか。大阪府北部で地震が発生してから3カ月が過ぎたが、その間にも西日本豪雨、気象庁により“災害”と表現された記録的な猛暑、近畿圏をはじめ特に関西国際空港に甚大な被害をもたらした台風21号、そして震度7を記録した北海道地震と、列島は大きな災害に立て続けに見舞われることとなった。この場を借りて被災された方にお見舞い申し上げると共に、一日も早い復興を願いたい。そしてこれらの災害から得た教訓が将来活かされることを重ねて願いたい。
 今年の災害ラッシュを「異常」といって片づけることができれば良いが、むしろ「災害というものはいつでも、そしてどこでも起こり得るものだ」という教訓を残していったのではないか。この中で四国・近畿地方を直撃した台風21号については既報の通りある在阪大手ねじ商社の物流センターが一時的に機能停止するなど大きな被害をもたらす結果となった。他にも関係者からは「室外機が吹き飛ばされた」「様子を見に行ったら工場の屋根が一部無くなっていた」といった被害が聞かれたほか、関西国際空港が一時的に閉鎖されていた影響により「空輸で届くはずだった部品が届かない」といったケースもあった。関係者の話を聞きながら改めて自然災害の恐ろしさを思うと共に、一方で備えることの難しさも実感させられた。全てに備えることは不可能である上に当然コストもかかる。一個人そして一企業のみに過重な負担がかからないようにするためにも、防災に対する理解、そして国全体で防災に取り組むような仕組みづくりが求められるだろう。
 台風21号はおよそ25年ぶりに非常に強い勢力を保ったまま列島へ上陸し、合計100の観測点で観測史上最大の瞬間風速値を記録したとされている。25年というのは一般の感覚からすれば非常に長い時間だが企業からすれば「1世代+α」となる。「近年稀に見る」「観測史上最大」と表現されるとあたかも非常に低い確率の出来事に思えてくるが、事業リスクとして捉えるならばこれらの災害はもはや起こるものとして備えなければならないのではないか。文科省の管轄下にある「地震調査研究推進本部」は今年2月、かねてから被害想定や発生確率が専門家により検討されている南海トラフ巨大地震について「今後10年以内に30%、30年以内に70~80%の確率で発生する」とした評価報告書を公表した。徒に恐怖心を煽るような真似は慎まなければならないが、8割というのはまず起こる出来事と見て間違いないだろう。列島全体が被災した今だからこそ、再び起こり得る災害について考える機会としたい。

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