災害時、社員の負担はどこまでケアできるか

2018年6月25日

 6月18日に発生した大阪地震により被害を受けた方々にお見舞い申し上げます。大阪での震度6弱の観測は史上初という。活断層が下を這う日本列島に地震の少ない地域はないということを改めて痛感させられる。
 大阪市中央区にある本紙の関西支社では、棚に置かれたものが一部落下した程度の被害であったが、交通機関の麻痺により社員が通勤できない状態に陥った。震度6弱を観測した地域に在住する社員は、幸い家族ともに怪我もなく無事で安堵したが、ライフラインの寸断、自宅の整理等を余儀なくされ出勤することは不可能だった。阪神淡路大震災を経験している社員ではあるが、大地震を体感する衝撃は耐性がつくものではなく精神的にも大きな負担を感じているはずだ。
 地震が発生したのは月曜日の朝。本紙では毎週編集を行う日で、非常時の中でも冷静に新聞制作の業務を遂行してくれた社員に頭が下がる一方で、災害発生時にどこまで社員に業務を優先してもらうべきなのか経営者として判断を迫られる機会となった。
 地震が発生した地域と離れた遠隔の拠点から、被害を実際に受けた拠点に業務指示を行う場合は、第一に会社の被害状況や社員の出社状況、また自宅の被害状況、交通機関の状態など正確な情報を把握していないと、状況がわからず温度差の違いから社員に意図せぬ負担を強いらせてしまう恐れがある。緊急時にどういった手段でどういった内容を把握するべきなのかという仕組みづくりは日頃から準備を整えておくべきだ。
 家庭や自身の安全を投げうってまで優先されるべき業務はないはずだが、震災当日の夕方に徒歩で行列をなして帰宅する会社員たちを見ていると、これは仕事第一主義の日本人という気質や美学といったものから生まれている光景ではなく、単純に非常事態が発生した場合の出勤についての取り決めが会社から通達されていないため、何が何でも出勤せざるを得ない状況を作り出していると感じる。人材確保や働き方改革などをキーワードに貴重な働き手にやさしい職場環境を整えようという機運を官民で高めている割には、災害のたびにこういった光景を未だ目にすることには疑問を持つ。
 地震から1週間が経過したが震災はまだ終わっていない。余震も続く中、二次被害に注意したい。初回の揺れで事務所・倉庫・工場内の設備に倒壊の恐れのある箇所はできていないか注意が必要だ。通勤中の思わぬ事故にも注意を呼び掛けたい。自宅の被害を受けた社員の心のケアにも配慮する必要がある。BCP対策を入念に準備してきた企業は、取り組みの成果を果たしてもらいたい。

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