常に考えよう 中小企業のBCP対策

2018年2月26日

 BCPは近年重要度を増しており、次第にその認識が高まってきたが、中小企業におけるBCPの策定率はまだまだこれからであり、対策の推進が求められる。度重なる災害を経験してきた我が国では、BCPについて問題意識を持ち方策を考え続けていくことが重要である。
 事業継続対策において初めに想起することは工場の集約型か分散型かについてでであろう。災害に備えて同じ製品を製造出来る事業所を新たに遠隔地に設けることは有効な対策の一つである。いずれかがいざ災害の際でも生産設備のバックアップ体制によりすぐさま製品の供給を継続できることは、分散型ならではの強みだ。一方、これを新設し持続させるには、売り先または売上を拡大させる見込みが必要があり、また、軌道に乗るまでは人的コスト、設備への投資コストの面で負担が掛かるものである。そうした中、中小企業のBCP対策における選択肢は二つであり、一つは既存の工場において耐震・耐火等の対策を強化することで企業の防災能力を高めていくこと、もう一つはバックアップ先のコストの回収について十分に対策を講じた上で分散を検討すること、この二者択一は総合的な経営判断となる。また、集約型、分散型のいずれの場合のBCPにおいても、企業の事業継続のためには防災と利益の確保が両立されたものでなければならない。
 また、集約型、分散型の共通の体制として、人的資源の保全の面では、いつ何時でも社員へスムーズに安否の確認と危険の通知ができる機動的な連絡体制を構築しておくこと、また、生産・物資の保全の面では、緊急時に国・自治体によらない企業単位での生活物資と製造に関わる物資の入手と運搬の方策を構築しておきたい。そして、更にはこれらの事項を含む系統立ったBCP計画書の作成に取り組むことが、いざという時の備えとなる。まずは一つの事業所からでも策定されたい。災害の際、他の事業所において計画が作成の途中であっても、すでに完成した計画書が社内にあれば、対象の事業所が置かれている特異な条件を除く範囲で、共通して適用できる項目については活用することができるからだ。
 人間は災害を経験しても暫くすると忘れがちであるが、海に囲まれ、山が迫り、国土の小さな我が国では、早めに対策を打つに越したことはない。水害や地震について自治体が想定する防災マップや指針等も活用しながら、自社に必要な対策を打つことで、自然災害に強い工場を作っていこう。経営者は自社を取り巻くありとあらゆるリスクとBCPについて考え続けておかねばならない、そうした時代を我々は生きている。

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